ペン入れ (ラフからのクリーンアップ) がうまくいかない問題への対処 Tips

ラフをクリーンアップする作業でうまくいかないケースがあります。ここではペン入れのTipsやクリーンアップの手順やコツなどを紹介します。

注意

この記事で紹介しているのはデジタル作業での方法です。アナログでのペン入れについては解説しておりませんのでご了承ください。 (この記事でも部分的には使えますが、アナログのペンの場合はペンが紙を噛んでしまうため描けない方向の制約が出ます。)

描画方針と仕上がりの違い

まず、描画方針と仕上がりの違いを確認してみます。
こちらの下絵をクリーンアップする手順を例にします。

細い線で均一に描く

アニメやイラストを見ると第一印象では細い線で均一に描画されているように感じます。まずは、細い線で均一にクリーンアップしてみます。
以下の方針で描画します。
  • 下書きをはみ出さないように
  • ていねいにゆっくり描画
  • 一度の描画で線を完成させる (同じ場所で2度線を引かない)
  • 失敗した場合以外書いた線は消さない
  • 線は必ずつなぐ

完成が下図になります。細い線で均一に線が引けていますが、やや物足りなさを感じます。ただし、アニメ的な絵にする場合や多色で着色する場合はこの線でも問題は無いため、この仕上がりで問題があるわけではありません。


太い線で強弱をつけて描く

次に、先とは正反対の方法で、太い線で強弱をつけて描画します。
以下の方針で描画します。
  • 下書きは目安、下書き線をはみ出してもOK、下書きと変わってしまっても良い
  • とにかく勢いをつけて、一発勝負で描画
  • 一度の描画で線を完成させる (同じ場所で2度線を引かない)
  • 失敗した場合以外書いた線は消さない
  • 線はつながっていなくても問題なしとする

完成が下図になります。線が太いため、先のイメージより、存在感や視認性の良さがあります。が、イラストや漫画の絵とはすこしかけ離れているイメージです。

実践

細い線で均一に描く方法と太い線で強弱をつけて描く方法の2つの極端な例を紹介しました。実際はそれぞれの中間をとった仕上がりを目指すことになります。

下図は以下の方針で描画したものです。
  • 下書きは目安、下書き線をはみ出してもOKだが下書きとは大幅に変わらないようにする
  • 一度の描画で線を完成させる (同じ場所で2度線を引かない)
  • 失敗した場合以外書いた線は消さない
  • 線はつながっていなくても問題なしとする



線は一回で描画しきる必要はありません。線は作ってしまっても問題ありません。
下図は以下の方針で描画したものです。
  • 下書きは目安、下書き線をはみ出してもOKだが下書きとは大幅に変わらないようにする
  • 一度の描画で線を完成させる必要はない、何度もなぞっても良いとする
  • 線は部分的に消してもOKとする
  • 線はつながっていなくても問題なしとする。が、大きく切れている部分は後でつなげる


完成形のイメージと強弱をどの程度つけたいかで描画の方針を変えていきます。

まとめ、チェック項目

  • きれいな線を書こうとして、細い線で均一に書きすぎていて、強弱の無い線になってしまっていないか
  • 下書きの線と完全に一致している必要があると思い込んでいないか
  • 「線は一回で描画する必要がある」と思い込んでいないか
  • 線を丁寧にゆっくり書きすぎて、線が震えたりしていないか
  • 線をぴったり繋ぐために、線をゆっくり書きすぎていないか
  • 「きれいな線=細い線で均一」と思い込んでいないか
  • 「線はすべて繋ぐ必要がある」と思い込んでいないか
  • 拡大した状態でもきれいになっている必要があると考え修正しすぎていないか

線の処理方法

以下では、線の処理方法のTipsを紹介します。

線の交差

髪の毛の先など線が交差する場合の処理方法の例です。

ある程度勢いをつけて描画すると下図のように先端で線が合わないことは多々あります。


このような場合は、線を消してしまいます。先端のはらいの部分も修正で作ってしまいます。


別の方法として、線を消せない場合は、下図のように手前で線を終わらせます。


先端部分をつなぎます。短い線を少しづつ伸ばしながら先端部でぴったり合うようにします。

線の強弱

頬の線は強弱をつけて描くことが多いです。この線も筆圧だけで強弱をつけて一回で描画していると思い込みがちですが、一回で描画する必要はありません。(熟練者で一回で描画する方もいますが・・・)


後から太くする部分を描き足して強弱をつけます。

線をつなぐ

一度に長い線が書けるならば問題ありませんが、短い線をつないで書く方法もあります。


一度に描いた線よりも多少強弱がつきやすいですが、それほど不自然には見えません。

線の強弱

まんがの絵では線に強弱をつけることで画面のメリハリを出したりキャラクターの存在感を高めています。また、アニメでもまんがほどではありませんが線の強弱をつけています。ここでは、どういった場所で線の強弱をつけるかを紹介します。

線を太くする場所

強弱のつけ方は書き手の自由ですが、一般的に線を太くする場所は以下になります。
  • 暗い場所
  • 目立たせたい場所
  • 厚みのある場所
  • へこんでいる場所
  • 太いもの
  • 高低差が大きい場所

線を細くする場所

一般的に線を細くする(あるいは描かない)場所は以下になります。
  • 明るい場所
  • 目立たせたくない場所
  • 薄い場所
  • 膨らんでいる、とがっている部分
  • 細いもの
  • 高低差が小さい場所

線の太い場所と細い場所が逆になったとしても、大きな違和感は出ませんので、上記はあくまで目安です。

曲線の描画

右向きの顔が不自然に見える - 利き手側を向いた顔の描画」の記事でも紹介していますが、右上方向に曲がる線、左上に線曲がる線、上向きの線は手の構造上描きにくいです。これらの向きの線を引く場合は以下の対策があります。
  • 画面やタブレットを回転させて描画する
  • 画面やタブレットに対して左側、または右側斜めに座る (画面を回転させずに自分の体を画面に対して回転させます。
  • ひじを前に突き出す、ひじを体側に引く

はじめのうちは画面や体の位置を変えて書くと良いですが、おそらく慣れてくると時間のロスになるため、ひじの位置を変えて書くようになる方が多いと思われます。描画のスタイルは個人差が大きいので一番描きやすい方法を用いるのが良いです。
著者
挿絵などのお絵描き担当。以前はオタクライフにどっぷりつかっていたが、最近は体力が衰えたためかやや引き気味。
現在も趣味で細々と制作活動中。
掲載日: 2014-05-05
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